摂食嚥下チーム

目的

口腔内(歯、のど、口の周囲・あご・ほおの筋肉など)の働きが悪くなると、口から食べ物を食べることができなくなります。摂食(せっしょく=食べること)・嚥下(えんげ=飲み込むこと)の障害は、窒息や肺炎、低栄養など生命の危険に直接的に結びつくばかりか、「食べる楽しみ」という人間の基本的欲求や生活の質にも関わります。
「摂食嚥下チーム」では、栄養状態、食事の状態、飲み込みの状態、口の中の衛生状態をチェック・評価し、多くの医療専門職との連携により治療や訓練をすることで、食べる機能の回復を図り、肺炎を防止して日常生活における活動性の向上を目指します。

対象

・食物を咀嚼(そしゃく=噛む)できない方
・食物が飲み込めない、または飲み込みにくい方
・食事の時にむせる方
・食事に時間がかかる方
・誤嚥性肺炎を繰り返す方
・口の中が汚れている方
・入れ歯が合っていない方
・栄養状態の悪い方

メンバー

医師: 全身管理、リスク管理、検査、治療方針の最終決定などをします
看護師: 体温・血圧などの管理、専用の管による栄養摂取、摂食のサポート、口腔ケア、薬の投与、栄養状態のチェック、家族指導などを行います。
看護助手: 食事状態の観察、食事介助、口腔ケアなどを行います。
言語聴覚士:

口腔・嚥下機能の評価と基礎訓練、摂食訓練、高次脳機能障害(※)の評価と訓練などを行います。

(※)高次脳機能障害:頭部外傷、脳血管障害等による脳の損傷の後遺症として、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害が生じること
管理栄養士: 栄養状態の評価、必要栄養量(水分を含む)の検討、経腸栄養剤(腸から栄養を吸収させる方法)の選択、嚥下訓練食の調製、食事形態の評価、栄養食事指導を行います。
薬剤師: 患者さまの嚥下機能に合った薬の形態の選択・提供を行います。

摂食嚥下ケア介入の流れ

当院では、栄養サポートチームと連携し、入院時に「食事状況調査票」を全ての患者さま又はそのご家族に記入して頂きます。そこで1項目でも異常があれば、病棟にて「摂食嚥下観察チェック表」を用いて、実際の食事場面を3回観察し、看護師または看護助手が記入します。その中で1項目でも異常所見が見つかった場合、摂食嚥下チームに連絡して対策を検討・実施します。また、絶食から経口摂取を開始する時など、医師が必要と認めた場合も随時対応します。

食事状況調査票(PDF)

摂食嚥下観察チェック表(xlsファイル)

また2週間に一度、摂食嚥下チームカンファレンスを開催し、問題のある症例への対策の検討、効果の再評価を行います。

カンファレンス

カンファレンス

摂食嚥下障害に対する対策

1. 栄養摂取方法の最適化(経口・経管・点滴):嚥下状態が良くない時は、無理に経口摂取すると誤嚥を起こす危険性があります。その場合、不足した栄養を点滴や経管栄養(鼻や胃瘻から栄養剤を注入)で補います。
2. 栄養管理:必要な栄養量と毎日の食事量や投与された点滴・栄養剤の量から、栄養が足りているか評価し、不足分を補う手段を考えます。
3. 口腔衛生:口の中が不潔になると、菌が増殖し、それを誤嚥すると肺炎をおこします。口腔ケアで清潔を保ち、誤嚥性肺炎を予防します。
4. 間接嚥下訓練:弱った飲み込みの筋肉を強くする訓練を行います。
5. 食形態の調整:嚥下の能力に応じ、最も飲み込み易く誤嚥しにくい食材を選択します。
6. 水分の形態調整(ゼリー・とろみ濃度設定):さらさらの水分はのどでばらばらになり、むせたり、誤嚥したりし易いので、嚥下機能の低下した方に対してはお茶などをゼリー状にしたり、とろみをつけたりする事で飲み込み易くします。
7. 摂取方法(スプーンサイズ、箸、ストロー、コップ):飲み込みの力が弱いと、一度に飲み込める量が少なくなります。一口の量をスプーンのサイズで調節します。また、水分はコップで飲むよりストローを使った方が安全確実に飲める場合が多いので、状態によって使用するものを選択します。
8. 姿勢・環境設定の検討:経口摂取を開始する場合、座位で行うよりも30度ギャッジアップ、高枕で頚部を軽度前屈位にした方が安全に嚥下出来ます。また、車椅子座位で行う場合は、足を床につけ、深く腰掛けて体が少し前かがみになる程度が良いとされています。
9. リハビリテーション(PT,OT,ST):嚥下筋群以外にも、全身の体力アップを図り、座位の安定、持久力獲得のためのリハビリを行います。
10. 義歯の治療や調整(訪問歯科診療):義歯が合わないと、それだけで飲み込みが悪くなります。また、咀嚼が不十分になり、誤嚥し易くなります。
11. 定期的な評価:対策を講じた結果、どの程度改善したかを定期的に再評価します。

摂食嚥下障害のある方が食べにくいものの例

・さらさらしたもの:飲むとのどで散らばり、気道に入りやすい
(水、お茶、ジュースなどの液体)

・固くて滑るもの:噛んでも軟らかくならず、のどに詰まりやすい
(かまぼこ、里芋、こんにゃく、たこ、いかなど)

・水分を多く含むもの:噛んでいると水分が出て、気道に入りやすい
(味噌汁、高野豆腐、スイカやメロンなどの果物)

・まとまりにくいもの:口の中でバラバラになり、飲みにくい
(ナッツ類、とうもろこし、キャベツなどの葉野菜)

・貼り付きやすいもの:口やのどに貼り付いて、送り込めない
(もち、板のり、わかめ)

・水を吸ってしまうもの:唾液を吸って口やのどに貼り付く
(ウエハース、カステラ、パン)

嚥下食について

摂食嚥下障害のある方には、それぞれの段階に合わせた食事の形態を選びます。
基本的には噛まなくても良く、一塊になり、水気が出ないものから始めます。

食形態の選択

食形態の種類   ゼリー食
    ゼリー食

ミキサー食   全粥・軟菜食(刻み)
ミキサー食   全粥・軟菜食(刻み)

全粥・軟菜食(一口大)   普通食
全粥・軟菜食(一口大)   普通食

嚥下機能検査

必要に応じて、主治医の指示により、嚥下内視鏡検査(VE)、嚥下造影検査(VF)を行い、経口摂取の可否、食材の選択、姿勢の選択、嚥下方法などを決定します。

嚥下内視鏡検査(VE)   嚥下造影検査(VF)
嚥下内視鏡検査(VE)   嚥下造影検査(VF)

訪問歯科との連携

入院中の患者さまであっても、義歯の調整や歯科治療、専門的な口腔ケアが必要な場合、訪問歯科診療を依頼します。また、退院時には情報提供を行い、在宅や施設で継続して診療を依頼する事もあります。その場合、退院前に開催されるサービス担当者会議に、訪問歯科の方にも参加して頂き、方針を共有しています。

訪問歯科診療

訪問歯科診療

院内研修の開催

2ヶ月に1度、院内職員を対象に、摂食嚥下関連の研修会を開催し、啓蒙とスキルアップを図っています。